監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ビョーク/カトリーヌ・ドヌーブ/デビット・モース/ピーター・ストーメア
2000/デンマーク
舞台は60年代のアメリカ。チェコから移ってきたセルマは、工場で働きながら女手ひとつで息子ジーンを育てている。
セルマは視力を失っていく目の病気で、同じ病気を持つジーンのためにつつましい暮らしをしながら息子の手術の費用を貯めていた。
しかし手術費用が貯まったある日。何者かによって貯金が盗まれていた・・・
シンガー、ビョークが主演(音楽も担当)し、2000年のカンヌでパルムドール賞を獲得した作品。ビョーク自身も主演女優賞を獲っている。
このセルマ役にビョークが良く合っている。それに彼女の表情がいつもやさしい。どんなに厳しい状況下でも彼女はやさしい表情をしているのだ。
これはきっと彼女の心に音楽が満ちているからだろう。どんな「音」でも彼女にとってそれは「音楽」として耳に入ってくる。そこから彼女は夢の世界=ミュージカル映画を作り上げている。そこは憎しみも悲しみもない平和な世界だ。
しかし現実は相反するようにセルマを追いつめていく。純粋で無垢であるが故に彼女は深みにはまってしまい、抜けることができない。
ところが僕はこの無垢さに違和感があった。変に意固地なのだ。そうかと思えば急に素直になったり。なんだか彼女に振り回されていたような、附におちない感がある。
この映画、ミュージカルとドキュメンタリーを併せ持っているため、その描き方もちょっと変っている。ドキュメンタリーのシーンは現実のリアルな雰囲気を捕らえるために手持ちカメラでセルマに迫り、ミュージカルシーンになると、設置した100台のデジタルカメラでミュージカルシーンを作り上げています。
ドキュメンタリーの雰囲気はまぁ良いのですが、ミュージカルシーンに関しては物足りなさを感じました。人々の生き生きとした感じがぼくには伝わってこなかったのです。ゼロではありませんが。
セルマの夢想の世界だからかもしれませんが、小さくまとまってしまったように思います。
ストーリーに関しては、深く触れないで欲しい特にラストに関しては、と監督からのメッセージがパンフにあったので止めておきます。
でもちょっとだけ。:
結果としてはあまりにも悲しく終幕を迎える。セルマにとっての唯一の救いは息子ジーンに手術を施すことができたことだけだ。絞首台にのぼり最後の歌を口ずさむ彼女の姿は脅えることのないやさしい表情だった。その瞬間、ほんのわずかな時だけど初めて夢想と現実がつながった。セルマの望む世界に。:
暗闇の中でビョークの奏でる音楽が映画を包みこむ。
悲しくもやさしく・・・
2000/12/24 厚木シネマミロード2